飛田ホテル

しかしこの頃、どうも見境なく本を買っている。気がするなぁ。
完全なストレスの解消な気がする。一月も相当本を買っているが二月は
もっと多い。それも病院帰りに新刊書店をウロウロするので新刊もよく
買う。当たり前だが、新刊書は高い。文庫で千円するなんて普通にする。
しかし目の前に本屋がありどうもストレスを感じている体で行かないのは
精神衛生に悪いじゃないか。なんか言い訳してるみたいだね。
そんな訳で買った新刊書「飛田ホテル」黒岩重吾を手にとっていると、隣
に老人に近いおっさんが目の前に立ってずっと立ち読みしている。ちくまの
棚で動かないので邪魔である。ちらりと見るとタイトルが老いのなんとかで
うんざりする。立ち読みしてる人には買う気がある人と全く買う気が無い、
時間つぶしの人の二種類ある。この立ち読みおっさんは後者で見てると分かる。
それで、あ、今日は土曜だ。と思った。土曜休みでヒマで本屋で時間をつぶし
ているのが多いのだなー平日と客層が違うのだ。平日は午後だと学生が多い。
この日は大安なのか白いネクタイをした礼服姿の男性をよく見かけた。この頃
は結婚式に行くよりお葬式に行くことの方が多くなったが、どちらもススンデ
余り行きたい気はしなくなってきた。面倒が先に立つし疲れる。義理で行かね
ばならないのだけ仕方なく行く。日頃からお金が無いと言ってるのもあり、義兄
さんが娘さんの結婚式の前に突然電話してきてから家に来て、お前とこは金が
無いやろからと、式の受付で出すお祝儀代と十万持ってきていただいた時は
頭が下がった。家人はよろこんで貰い、十万祝儀にしろと言い私に渡した。
ここまでされて行かないわけに行かん。服が無いので母親の留袖をワンピース
に仕立てなおしたフォーマルを借りて着てついでに金のネックレスも借りて
結婚式に出たのを思いだしたな。帝国ホテルであり、はじめて行った。料理は
フルコースでなかなかおいしかったけど、家に帰って着替えて食べたお茶漬けは
すごくおいしかった。内緒だがお祝儀は五万にして、残りは式に出る費用や何や
に使わしてもらった。新しい靴を買ったり家人の礼服を買ったりしたからね。
このまま今度は義兄さんが何年後かに亡くなったら、香典代を私等に用意して
そうな気すらしてくる。家人の両親は早くに亡くなっている。
「飛田ホテル」は大阪の今もある飛田遊郭の近くの売春宿と他の底辺に住む人
を描いている。作者も西成のドヤで住んだことがあった。五十年前ぐらいに
発表された小説をまとめた本。吉行淳之介黒岩重吾に酒場で会うと、「おい
釜ヶ崎」と呼んだと本人が何かで書いている。