贋世捨人

　作家の車谷長吉さんが亡くなった。５月17日　６９歳　死因は喉に物を詰まらせて
窒息死。直木賞「赤目四十八瀧心中未遂」で受賞。私小説作家。出身は姫路市飾磨
　車谷さんから毎年、年賀状をいただいていた。今年の賀状の字が随分と乱れていて
お体の具合が悪そうだと思っていたけど、電話しなかった。初めて姫路の市民会館で
お会いしてから、ずっと親しくして頂いてよく電話でお話をした。小説家と親しくなった
のははじめてだったが、どこかプロの小説家ぽくない、誰かと話す時もちょっとオドオド
し目を見てお話できないような方だった。車谷さんの小説は、全部買って読んでいた。
十年前に東京へ行くと言ったら、家に来てと言われて図々しくお邪魔して立派な卓袱台の
ある部屋で、奥さまと三人でお話しをしたな。帰る時に、一緒に森鴎外記念館の図書館まで
案内して歩いたことは一生の思い出だ。良い人だった。生きるのが下手で、神経を痛めて
苦しんでおられた。
最近、高橋順子さんの詩集を読んで東日本大震災から大きなショックを受けて強迫神経症が
再発して苦しんでいるのを知った。あの時に、思いきってお電話すればよかった。
苦しい人生も、あっけなく終わりですね。車谷さん私は、さびしいです。