うらおもて人生録

土曜日、朝から終日晴れてあたたかい。桜の花も一気に咲きはじめ、芦屋川べりは三分咲きから四分
咲きだった。
家人の会社の直の上司にあたる男性Mさん(65)が尼崎にある病院に入院しているので、見舞に行く
のに、直前に読む本を持っていきたいから何か本が無いか?と言う。いきなりそう言われてもね、
なんでも定期検診で引っかかり、すぐ入院で今はどうやら末期の胃ガンらしく余命幾日かも。会社
に本人は出る予定だったのが、体が動けず寝たまま状態らしい。どうも気が付いた時は手遅れ状態
だった感じらしい。何も食べれないし、助かる見込みも無いそれに独身で身寄りがいない子どもも
居ない。貯金は一億以上あるとかだった。ずっとひとり見で、節約生活してお金は貯めていた。
でも死んだら幾らお金があっても使えないし。家人が会社関係の人の見舞にいくなんて始めてなので
余程、気になっているらしい。私の母親がガンで手術のために入院した時も一度も来なかったのにね
前まで車で送ってきても、中に入らなかった。
とにかく、うーんと本棚を見て何がよろしいやろと思い抜いたのが「うらおもて人生録」色川武大
一冊しか無いけど、また手に入るだろうし家人の不幸な上司さんに進呈した。この本を始めて読んだ
時は、どういうのか目の先が少し見方が変わったような「ああそうなんだ」と、目からうろこ状態に
なった気がしたなー。色さんにしかできない人生の教え方と言うのか、その頃いろいろと壁にあたって
いた頃だったので、読んでなんだかラクになったんだな。今も、その教えは頭にしっかりある。
下らない新書のノウハウ人生訓より、ずっと本物の本だ。だから大切な一冊なのだ。家人が病院へいき
本を渡したら、よろこんでくれたそうでホッとした。知らなかったけど、今日は色さんの命日だった。