宗家の葬式

nae586252012-04-07

やっとお花見日和の晴れの週末ですね。朝の散歩道の小川べりの桜もきれいに咲いてきました。
古い桜の花が満開になり枝垂れて咲いているのを見ていると、木に霊がいつの間にか宿っているような感じがする。桜の樹の下には死体が眠っている。と言われるのも、あながちウソではないようなモノを感じるな。
俳句では桜を花と言うけど、桜咲く季節に死にたいと願った高名な俳人もいた。死と桜がハラハラと散るはかなさはよく似合うのだ。
ところで今日は韓国ドラマの「家紋の栄光」をサービス券でとりあえず借りたのを見たが、ここに名家(韓国で宗家)の古い大きな家で伝統的なお葬式を初めから終わりまでしていて、それがなんだかとても面白かった。日本の田舎の旧家でするお葬式とも似ているし、とにかく儀式が多く人も集まるし、家の庭で夜中も食事したり飲んだりして眠らずに故人を偲び、身内の人は粗末な麻みたいな生地の韓服を着て頭と腰に縄を巻いている。
五日間葬式の儀式が続き、ゴザの上で毎日泣き続けてようやく終わる。一日に何度も礼拝があるし遺族は断食が基本で眠れないし、とにかくすごく大変な儀式。テレビドラマだから現実よりか大袈裟かもだけど、今でもこれに近いお葬式を古い家紋の家はしているんだろう。しかし第三話からフツーの韓国ドラマの展開で、やや興味が落ちる。
韓国のお葬式をみていて、思いだしたのに昔、芦屋の家の近所に大きな庭のあるお屋敷に、中学の先輩で在日の韓国の人が住んでいて、たまたま同じクラブでスポーツをしていたので親しかった。お父さんはおそらく日本語がうまく話せなくて、家にいくと夏はダボシャツとステテコ風の格好で玄関でしゃがんでニコニコと「よく来た」と迎えてくれた。先輩が少し遅い結婚する時に、二階と言っても大きめの家一軒ぐあいある広さのところに結婚道具が運ばれて、クラブが終わってからそれを見てくれと皆で見にいって、すごい道具にびっくりしたり、結婚式の豪華なのもびっくりした。家業は建設関係の会社をお父さんが創業して多分、お金持だった。先輩は副社長だったらしい。
そのお父さんが亡くなって、芦屋のお宅で葬式があり行った時が、「家紋の栄光」に少し近いのだった。門を開けて、庭には台だ出て弔問の人が飲んだり韓国語でわいわいしゃべってたりしていて、受付でお香典はとらなかった。屋敷の庭側の扉を全部開いて、祭壇がつくられ花で飾られ、遺族の方がたが喪服でひとりひとりお辞儀をされた。見ただけで、とても立派なお葬式だと思ったが、先輩が一番前で私たちが弔問にいくと一言も言われず涙のたまった目で深くお辞儀をした。それで、どれだけお父さんを慕われていたのか、どれだけ亡くして悲しみが深いか伝わって、帰り道でみんな泣いた。お金をかけた立派な葬式を出すのも大事かも知んないが、深く愛していた父上を亡くした悲しみの心が一番の故人へのはなむけだと、あの無言のお辞儀が伝えていたような気がする。先輩は今もあの家に住んでいるだろうな。