惜別の人

朝は晴天、今週は気持の良い秋晴れの日が続く。ウチの最寄駅は新駅で小さい(しかしエスカレーターとエレベーターがある)おまけに土地が高いので駅前に店が殆どない。広場はあるし花壇や植木も多く、道に誘導灯まで埋め込んであるのに、喫茶店ひとつ無い。午後になると制服姿の子どもが携帯で呼んでロータリーにはお迎えの外車が並ぶ風景が毎日で、ようするにそんなとこらしい。
その改札で30分ほど人を待って出入りする人を眺めていた。山手幹線沿いにある回転寿司店で遅い昼食を食べながら話す。そして今日が十一月十七日なのをふっと思う。そうなんだなぁ。
去年のこの日は辛い日だった。個人的にも、一生で一番しんどい頃と言って良い事があり大袈裟に言えば少し死にたい気分になるほどで、その時に或る場所で黒岩さんと言う女性と会って話していた。それでああ東京で闘病されている黒岩比佐子さんを連想していたら、その日に永眠されたのを知った。無念の死だった。これからを期待されている人だった。訃報を知って、しばらく何も手につかずにぼんやりしていたな。
こちらの黒岩さんとは一年近く、毎月会う用があり結果的に黒岩さんの尽力のお陰で窮地を切り抜けることができた。不思議なつながりを今も感じる。今年になって知ったけれど、黒岩さんは某大作家の下で助手のような仕事もしていてそれが資料調べや古書集めの資金になっていたらしい。他にも似た話は結構聞く、著書を出していても生活するほどお金は稼げない、大先生の校正や下調べをして口を糊するのも生きていくため。そんな一年前の今日を悲しく思いだした。