冬支度

nae586252005-11-20

この頃、キーンと寒い朝が来る。暑いよりかずっと良いし、空もきんと冴てきれいなのだが、やはり急に寒くなると風邪をひきそうになったり、体が追いつかない気もする。それに追い討ちのように、仕事場で否応なく仕事を押し付けられることがあり、うんざりしたのが木曜でそれが、これから幾度となくありそうなので金曜にはっきり上に断りを言ったり。これ以上、仕事させられるなんてご免だし、それでなくても今でもなんとか持っているんだから。まぁ、それで押し付けようとした人が気を悪くしたかもだが、嫌だと言えないようにして受けさせるんだから、こちらも断るのも嫌だと言えないようにするしかないもの。それでできないなら辞めるしかない。
そんなことで夜も寝にくく、めまいと耳鳴りに悩まされていたが、やっとマシになってきた。土曜にたまたま出たのが、良かったと思う。耳鼻科に行って薬を飲むより神経のストレスをなくすことが治療になるのがわかる。神経から不眠や耳鳴りが起きているから。車で神戸の街へ出て、そこから歩いて朝の街を歩く。前に行ったけどお茶はしなかったムジカへ入り、紅茶とアップルパイを頼もうとしたら、アップルパイはないんです。と悪そうに言う。神戸店は、ないんだ。それならと洋ナシのタルトと紅茶で午前11時のお茶の時間にした。その前に好きな絵描きさんの女神の絵を使って年賀状を作ろうと思い、写真に撮ったので店のMさんに見せて話しをしたが、思わぬほど沢山しゃべっていた。ここにはフェルメールの大きなポスターがあり、それを私が預かって持ってきた。タルトは手製でとてもおいしいし、他の人が食べているオムライスもおいしそうだったな。また行こう。ムジカはまだ余り知られていないが、食事もお茶もできる穴場な店なんじゃないかな。
人と思わず会って話しをするのは薬にもなる。店を出て、元町へ自然に足が向いて行きつけの古本屋を覗いたり、古本を買ったりしていると、朝のめまいがなくなっている。久しぶりに沢山歩いたが、寒い時は汗も出ないし歩くほど体が動いて温まってくる。全然疲れない。
帰ってから、新刊で見つけた『三人噺』(文春文庫)を読みはじめたら、あっと言う間に読み終わる。志ん生の長女の美濃部美津子さんの話を編集したものだが、とても面白い。私は江戸落語志ん生志ん朝も好きだ。志ん朝が急死する前に美津子さんが最後の舞台を見ていて、声がおかしいと感じ電話したり兄弟しかわからない逸話がある。間に馬生という弟がいたが50代でなくなっている。おかしいもので、この方等の話しを写した本を読んでいると、志ん朝の生きていた時に聞いてた声で聞いているように読んでいる。志ん生の生の落語は見てないけど、それでもテレビでかビデオかで昔見たのを覚えている。
志ん朝さんを最期にテレビで見たのが、落語ではなく松鶴が亡くなった何回忌かで追悼番組にゲストでよばれたのだった。私は上方のは松鶴が好きだった。どことなく油が乗ってる感じの頃の志ん生と似てるかな、松鶴が晩年口がうまく回らず苦しんで高座をしたあと弟子に全盛の時のレコードを聞かせて、「これが、ほんまのわいの落語や」と泣きながら言ったエピソードをした時、思わず志ん朝が泣いてハンケチで目を拭いた。人前で泣かないと、その前にしゃべっていたのに、その志ん朝が思わず泣くほど松鶴の気持がわかったんだろう。
それが志ん朝を見た最後だった、『三人噺』を読むと、どこかで三人の落語を聞きたくなるね。